遊ぶこと

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今日はどうぞよろしくお願い致します。最近、芦谷さんはどんな感じですか。
芦谷 
よろしくお願いします。最近は結構忙しかったんですけど一段落しました。もうしばらくゆっくりしようかなと思っている感じです。
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そうなんですね。一番忙しかった時期は?
芦谷 
8月に公演の稽古がありまして、それと並行してワークショップのアシスタントをしていて。
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8月の公演と言うのは、高野裕子さんとのデュオの事ですね。
芦谷 
はい。それと、劇研なつまつりの「かむじゆうのぼうけん」という子供から大人まで楽しめる公演で、子供達がすごく楽しんでくれていたので良かったです。
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「かむじゆうのぼうけん」。一番印象的な体験は何でしたか?
芦谷 
今年が劇研での最後の開催ということもあって、毎回40人ぐらいの子供たちと一緒に工作をしたりだとか動いたりだとか。そのパワーもすごいんですが、子供のクリエイティブな面がすごく面白いです。大人の想像を超えるものを作ってくれるので、刺激的ですね。
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子供と遊ぶのってすごく訓練がいるような気がしますね。頭の中のシミュレーションで遊んでいるときは上手くいくんですけど、実際に遊ぶ時は引きずられるようになる。どっちが主導権を握るとかではないんでしょうけど。
芦谷 
子供の人数が多いので、やっぱりある程度、子供がリラックスできる空間を作ってあげるべきなのかなと思います。自分の家族の子供と遊ぶ時は自由にしたら良いと思うんですけど。
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安心して遊べる様な空気作りというか。
芦谷 
やっぱりそれは劇研なつまつりの、10年の間の良い積み重ねがあるんだと思います。
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盛り上がるんでしょうね。とても。
1サファリ・P
サファリ・Pは、2015年8月、利賀演劇人コンクールに参加したメンバーである俳優・高杉征司、ダンサー・松本成弘、演出・山口茜を中心として結成されたカンパニー。利賀では優秀演出家賞一席を受賞した。固定のメンバーで継続した創作活動を行うことにより、クオリティの高い作品作りを目的とする。(公式サイトより)

高野裕子さんとのデュオ作品について 2

撮影:高橋拓人
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さて、UMLAUTでの高野裕子さんとのダンスがとても良かったです。
芦谷 
ありがとうございます。
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高野さんと芦谷さんの、人間としての誠実さがあっての作品だったんじゃないかなと思います。まず、言葉を使っての評論が追いつくようで追いつけない感じがあるんですよね。表現されている作品である以上、言葉によって解説は出来るはず。でも、洞察出来ない領域が確実に存在している。そんな感触です。作品の流れとしては、二人が最初、正座して向き合ってお互いの膝に同時に触ろうとする。普通だったらキッカケを取るのかもしれないが、何だかそれ以上の交錯があったような気がしました。目線とかテレパシーとか、そういう物理的な方法じゃなくて、何かもっと、何だろう、お互いの存在があるべき状態になったら「事の起こり」を合わせられる事が出来るのかもしれない。そういう、洞察も言葉も及ばない世界。
芦谷 
うーん。
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言葉を超えた、相手とのコミュニケーション。その摩擦の境目や、擦れ合う時それぞれの主体の裏側に広がっているものが見えた気がする。最後の方では照明を消して、ブラインドから漏れる外の明かりだけだったじゃないですか。そこは本当に、幽霊みたいな感じがして・・・
芦谷 
初めて高野さんと作品を作らせて頂くにあたり、お互いにコミュニケーションを取っていたんですが、それが作品に現れていたような気がします。向かい合って握手をするところから始める、毎日のその気持ちとか、相手に触れ、さらに相手の心の中に触れる、と言う経験が大きいと思います。稽古場でどういうふうに時間を過ごしたかというのはやっぱり本番に出るな、と思いました。それは観劇をするときにも思います。だからというわけじゃないですけど、思ったことを素直に共有したり、とかは意識しました。
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自分の手を素直に差し出し、相手の存在に触れるところから始まったのですね。
芦谷 
そうですね。また、相手に触るだけではなく、自分自身に触るというところもありまして。
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自分自身を確認する?
芦谷 
自分を触り、自分の人称を口に出したり。色々なアイデアが出たんですが、最終的にはそうした演出が二人の間に残っていきました。
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自分を確認する。
芦谷 
あとは、言葉をどういう風に使ったら面白いのか、と言うのは残っていきましたね。
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暗闇の中でさまよっているシーンもありましたね。いや、さ迷っているようでも、しっかり歩いているようにも見えました。
芦谷 
明かりを消してからのシーンでは、その前までの「お互いの体を触れ合うシーン」をなぞろう、という話になっていました。個人的な過去の事や家族のことを呼び起こされるというか。毎回違う作品になりました。きっと何かが伝わる、と言うのは信じています。
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何と言うか、個人的にはまだ解決できていない作品なんですよね。もう一度拝見したいです。闇の中に揺らいでいる身体は、思考とか精神のレベルを超えた層でただ揺れていて、その小さいけれど大きな動きの中心がそのまま空間の中心と重なって揺れていて、みたいな。
2芦谷康介と高野裕子アトリエ公演vol.1
date:2017年8月6日~8日(全3回公演)
place:UMLAUT
photo:高橋拓人

もう一度振り返ると

撮影:高橋拓人
芦谷 
改めて、自分にとって表現とはどういうものか、そして自分はそれに対してどの様に思っているのかということを見つめる公演だったな、と思います。それは本当に、高野さんとお話をしたり、色々なアイデアを試すという時間をもしっかり持てたので。心と体の関係に、改めて興味を持てたし、もっと追及ができそうだとも思いました。
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具体的には、どのような稽古をされたんですか?
芦谷 
テキストを持ってきて読んだりだとか、アイデアを出し合って検証するというのを繰り返して。あと、初対面だったのでお互いのことを話し合って。話し合うと言うとちょっと堅いんですが、自分が何に対してどう思っているであるとか。そういうことです。
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距離が近くなったということですね。
芦谷 
そうですね。
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距離が近くなった上で、距離の遠さを感じる、みたいなことはありましたか?
芦谷 
ああ、そうですね。同じ舞台芸術を共用している、ということはあるんですがバックグラウンドの違いは感じていました。今までの経験でやったりだとか、環境とかも全然違うし。でもそれは、お互いの事を知ったからこそ感じた事ではあります。そういうのを含めて、良い出会いだったと思いますね。
撮影:高橋拓人

理想の・・・

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ご自身が考える、理想の稽古とは何ですか?
芦谷 
何だろう、何か、思ったことを言いやすい稽古かな。やっぱり一人で作っているわけではないので、色々な人のアイデアが、良かったとしても良くなかったとしても多ければ多いほど選択肢が増えますし。
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高野さんとの稽古場はそういう感じだったんですね?
芦谷 
僕はどちらかと言うと普段は自分から喋るよりもに話を聞いてから考えることの方が多いので。一対一だったということもあるかもしれませんし、言いやすい環境にしてくれてたのかもしれませんし、僕の方で意識していたというのもあります。そういうやり方が必ずしも、良い作品に結びつくかどうかははっきりと言えないですが。
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自分でアイデアを出さずに、演出家が「交通整理」することで良い作品になる場合もありますしね。

言葉と動きのあいだで

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芦谷さんの最近のテーマは何ですか?
芦谷 
一つは、人と自分を比べずに、自分がいいなと感じていることを大事にすることをここ数年は意識しています。
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最近は何に対して良いと感じられましたか?
芦谷 
高野さんとの公演で面白かったのが、彼女が踊っているところに自分が擬音を当てる、ということをしていて。そこで発生した音をまた体に変換したりだとか。その動きをまた違う言葉に変換したりだとか。それがまた何かに発展できそうな気がしていて。あれは何か発話するということと、体というものがもっと複雑な、面白い関係を築くような気がしていて。それを例えば逆に辿って言ったらイコールになるのかみたいな。言葉と身体の関係ですね。
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人間がその時々で発言したりとか動いたりだとか、それらの純粋な行動を突き詰める実験。それらのアクションが輝いた瞬間、意味が意識が移り変わる瞬間。面白そうですね。俳句みたいな感じ。
芦谷 
俳句。そうですね。

質問 門石 藤矢さんから 芦谷 康介さんへ

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前回インタビューさせていただいた、劇団ZTONの門石藤矢さんから質問を頂いてきております。「リラックスタイムには何をなさいますか?」何をすると癒されますか?と言うことですね。
芦谷 
本を読むか、ヨガ。でもリラックスタイムでいつなんだろう。でも、本かなあ。

自分自身であること

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ご自身を変えた最大の経験は何ですか?
芦谷 
なんか僕は、男性も女性も好きになるんですけど、そういう事に気付いた時かな。それが自分の表現活動に結びついている気がして。やっぱり、そういう自分への理解というのが大きな経験だったと思います。
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それ以前と以降で、演技の質が変わったりとかはありますか?
芦谷 
大学に入るまでは、演劇は見たりしていたんですが、自分でやる、という事はなくて。どちらかと言うと自分のそういうことはあまり表には出さなかったんですが、大学の舞台芸術学科に入って、自分の自分らしさというものを出しても良いと言うことが分かって。大学に入ったと言う事はやっぱり大きな転機です。
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なるほどなあ。私も自分自身の事を冷静に周囲に言ったり自分でも引け目に思わなくなる事で、ちょっとずつ取材のあり方が変わってきたように気がします。自分自身である事に諦めが付いた、みたいな。
芦谷 
諦めた、か。
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今まであんまり自分は自分自身のことを表現してこなかったので。それはつまり、他の人に自分のことをあまり認識させないやり方だったのかもしれない。実家が宗教団体の施設管理をやっていたり、まあ相手によっては引きかねない事色々。
芦谷 
全然引かないですよ。
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ありがとうございます。

演劇とダンスの観客

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芦谷さんは俳優もダンスもされておいでですが、演劇とダンスの観客の違いを感じたことはありますか?
芦谷 
うーん。ないですね。
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では逆に、演じているときのご自身の体は、どんなところが違いますか?
芦谷 
なんというか、その日その劇場の舞台の上にいるということは演劇でもダンスでも同じだと思います。もし違うことがあるとするなら・・・役かなあ。
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役柄?
芦谷 
ダンスの方が、自分の体が感じている感覚というのが前に出てくるんだと思うんですけど、演劇の方は役というファクターがある、ということなのかな。
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いつか、どんな演技ができるようになりたいですか?
芦谷 
うーん。なにかそういう、目指すみたいなものはないですけど、その時の感じ・・・かな。あえて言うなら、たくさんの人と表現を通じて分かち合えるような。そういう思いはあります。

これからも

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今後、どんな感じで行かれますか?
芦谷 
いま、サファリ・Pという劇団に所属していて、そこでのクリエイションがすごく面白いので、これからも続けていきたいと思います。バランスよく、表現活動と自分の時間を持ちたいと思います。
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ありがとうございます。

砂時計(15分計)

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今日はお話を伺ったお礼にプレゼントを持って参りました。大したものではありませんが・・・よろしければどうぞ。
芦谷 
ありがとうございます。綺麗に包装してありますね。(開ける)砂時計ですか。嬉しいです。なんか、ツボを知ってますね。
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15分計です。
芦谷 
メッセージ性を感じますね。
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砂時計というのは、砂が流れ終わった瞬間は通知してくれないじゃないですか。ふと目をやった瞬間、時間が過ぎていたのに気付く。時間を管理する道具としては破綻しているんですよね。そして、とても人間に近いと思うんです。時間の進行に常に置いて行かれてしまう、という意味で。
(インタビュー終了)