劇団子供鉅人 本公演ニューカウントvol.10「不発する惑星」 2

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今日はどうぞ、よろしくお願いします。劇団子供鉅人の益山貴司さんと制作の新藤さんにお話を伺います。
二人 よろしくお願いします。
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最近、益山さんはどんな感じでしょうか。
益山 
「不発する惑星」の稽古が始まっています。ワークショップでこうやったら面白んじゃないかというアイデアを手探りしています。バレーボールをしたり、ゲームしたり。割と自由闊達にやってる感じですね。
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稽古場の雰囲気が本番でも伝わったらいいですね。
益山 
劇団の良いところって、仲間って感じが舞台に出るところなんじゃないかと思ってて。プロデュース芝居とかでも、生き生きした雰囲気が出るのは座組の人たちがお互いを信頼しているのが根底にあるから。それが伝わるとすごく安心して見れますよね。
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子供鉅人が大阪でも公演をやってくれるというのが、私にとってはすごく嬉しいです。10月3日の大阪公演初日からスタート、10月15日~21日東京・原宿VACANTまでの短期決戦ですね。
益山 
僕らもやっぱり、大阪でやるとほっとする瞬間ありますね。昔からのお客さんが来てくれたり。客席が暖かいので、そういうところに甘えながら(笑う)良いスタートダッシュを切れるように。
1劇団子供鉅人
05年益山貴司・寛司兄弟を中心に大阪で結成。「子供のようで鉅人、鉅人のようで子供」の略。関西タテノリ系のテンションと 骨太な物語の合わせ技イッポン劇団。団内公用語関西弁。人間存在のばかばかしさやもどかしさをシュールでファンタジックな設定で練り上げ、黒い笑いをまぶして焼き上げる。生バンドとの音楽劇から4畳半の会話劇までジャンルを幅広く横断。3度に及ぶ欧州ツアーやF/T13参加。CoRich舞台芸術まつり!2012準優勝。関西でほんとに面白い芝居を選ぶ「関西ベストアクト」二期連続一位など勢力拡大中。(公式サイトより)
2劇団子供鉅人 本公演ニューカウントvol.10「不発する惑星」

オリンピック開催予定地の工事現場で働くエロ漫画家タイチ。
「輝かしい日本の未来」のために働きながら自分の未来が見えない彼は、世田谷の裏ミニコミ紙「バックドラフト」に実録不倫漫画「不発する愛情」を連載していた。
そんな彼は隣人の主婦、タマキに思いを寄せているが、彼女は自宅で開く料理教室があまりにまずいため、近隣の主婦たちにいじめを受けていた。
ある日、工事現場で不発弾が発見される。
工期を急ぐ現場は、バイトのタイチに埋め直しを迫るのだった。

過去の因果が我が身にタタリ、未来のラッキーがたまにアタル!
2019年の東京を舞台にした、ブラック・スイート・コメディ!(でも泣けるよ!)

不発する人々の、不発するぶざまなロマンス劇!

出演:益山寛司、影山徹、億なつき、ミネユキ、山西竜矢、益山U☆G、うらじぬの、地道元春、益山貴司

脚本・演出:益山貴司

【大阪公演】会場:HEP HALL
2019年10月3日(木) 19:30
10月4日(金) 19:30
10月5日(土) 13:00/18:00
10月6日(日) 13:00/18:00
10月7日(月) 14:00

【東京公演】会場:原宿 VACANT
全10ステージ
10月15日(火) 19:30
10月16日(水) 19:30
10月17日(木) 14:00/19:30
10月18日(金) 19:30
10月19日(土) 13:00/18:00
10月20日(日) 13:00/18:00
10月21日(月) 14:00 ★oono yuuki アフターライブあり

TVドラマ監督初体験

益山 
それと、昨日ちょうど情報が解禁されたんですが、劇団スフィアという声優さんたちの劇団のTVドラマの監督をさせていただくことになりました。東京の小劇場から5組出るんですが、その内ひと組の脚本と監督です。元々映画少年なところがあるので楽しかったです。演劇とは違って、シーンをカットで割っていくというのがなかなか追いつかないですね。関わっているスタッフさんが多いので、全部の様子を見ながら進めていくというのが新鮮でした。
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瞬間のイマジネーションが問われる感じですね。
益山 
そうですね、やっぱり後で編集があるから、一応は撮っておいて後でカットするなり使うなり、が出来るということもあって。僕も本番に入ってからも、どんどん訂正するタイプなので、そこは似てるなと思いました。
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ライブ感がありそうですね。とても楽しみです。
新藤 
MXなので、配信になるかもしれません。関西の皆さんにも是非見ていただきたいですね。
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どんな話になるかちょっと期待ですね。
益山 
タイトルはもう出てるんですけど「コミック・オブ・ザ・デッド」というゾンビものですね。ゾンビものって、自分の芝居を通して実は初めてやったんですよ。楽しいですね。何か目的がはっきりしてるから。登場人物がどんどん死んでいくし。
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斧女は意識持ってるしね。
益山 
あ、よく覚えてらっしゃる。
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(子供鉅人制作の倉本さん、以前のインタビューでゾンビがとにかく好きって言ってたなあ)

対決

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「不発する惑星」、現在の手応えはいかがでしょうか。
益山 
今回はシンプルにしたいなということを最近考えていまして。セットもいらないな、プロレスみたいにリングが一つあるだけ、みたいな。
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大道具を使うのではなく、なるべくシンプルにするという事でしょうか。
益山 
私、凝る時は凝ってしまうんですよ。ダンボールで全ての背景を作っちゃったりとか、役者を100人出したりとか。でも今回は、役者が際立つ舞台にしたいなと思っています。
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今回は役者の方を目立たせたいと。
益山 
そうですね、私は結構空気を作りたいという欲望があって。やりたい演出をするために脚本を書くというところがあったんです。今回はいつになく、演出をするということと脚本を書くということを切り離したいと思っています。脚本は脚本で、言葉でどんな勝負が出来るのかという挑戦をした上で、演出家の益山貴司にバトンタッチ出来たらいいなと思っています。このシーンを演出するためにこういう脚本を書きましたということじゃなくしたい。最近の三文オペラとかマクベスとか、既にある脚本をどうやって自由に解釈して演出するのか、それがすごく楽しかったんですよ。今回はセルフでやってみたい。遅筆なので掛け持ちで演出することになるんですけどね(笑)。

不発するロマンス

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不発というテーマについて色々考えてきました。不発とは失敗とはまた違う概念なのかなと思っていて。「自分の欲求があって、それを満たすための行動が定まっているのに、行動に移すことが出来なかった」というのが一般的な不発。そして「行動したけどその途中で失敗した」や、「行動を完了したが残念、振られてしまった」というのも不発の中に含まれてしまうように思えるんですよ。自分の目的が達成出来なかった事を自己憐憫の中で評するとき、「不発」ほどちょうどいい言葉はないんじゃないか。その内的体験は、内向きに人を成長させると思う。その意味では感受性豊かになると思う。
益山 
人にはみんな不発弾みたいなものを抱えてると思うんですよね。頑張って漫画を書いてたけど勇気が出なくて投稿できなかったとか、あの子のことが好きで好きで手紙を書いたけど一通も出せなかった、とか。妄想とかとは全然違う、自分の中で蓄積されながらも起爆スイッチを押せなかったのが不発弾なんじゃないかと思います。火薬がおそらくパンパンに詰まっているものの爆発させることが出来なかった弾。それが時々変な形で爆発する事もあったりして、その時にロマンだったり悲劇だったり喜劇だったりが生まれるんだろうなと思います。
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変なタイミングで爆発する時。自分では完全に不発弾をコントロールしてるつもりでも、妙なタイミングで出てきてしまうものがあるんですよね。
益山 
ありますよね。人から言われてなる時もあるし。自分で間違ってスイッチを押しちゃう時もあるし。でもそれって人間だけじゃなくて国や集団でもある。私が子供の頃に住んでた町で不発弾が見つかって、全員避難しないといけない時があったんですよ。町全体がすっからかんになっちゃったんです。それが結構、自分の衝撃的な原風景になってるところがあります。戦争という大昔の不発弾が今の私たちの生活を変形させる瞬間というのは不思議な気持ちがするし、過去と現在が地続きになる瞬間が面白いなと。
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いつもは絶対に顔を出さないけど、実は薄く存在は知っていて、何かの拍子にその頭を出してくる。
益山 
自分が今やっていることも、将来何かの不発弾になるのかもしれない。
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そう考えると怖いですよね。大人になったからこそ、不発弾への警戒が強くなってくるような気がする。
益山 
私は若い頃、自分は何でもなれるタイプの人だと思っちゃってたんですね、だから弾のボタンを押せないんじゃなくて押さないだけ、俺はまだ本気だしてないだけだと思っちゃってたんです。でもある程度歳取ってくると、やっぱりこれは無理だな、なれないなと気がつく瞬間。それが一番無様というか、悲しいというか。
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自分の限界を知る瞬間ですね。
益山 
それを美しい思い出とするのか、苦い瞬間とするのかは本人の気持ち次第なのかなと思います。

爆発よもやま話

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不発弾が登場人物に埋まっているという触れ込みの作品。最初からスリリングですね。
益山 
トラウマ大合戦ですね。
新藤 
トラウマのカードゲームやな。
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ご自身としては、見せ方についてはどんな立ち上げ方が有効だと。
益山 
本当にプロレスみたいな感じがいいかなと思っていて。役者達があそこに続々と登場して格闘していくというような感じで入れたら面白いだろうなと思いました。会話の格闘技みたいな演劇ができたら面白い。
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格闘技は実際やりましたね。
益山 
みんなボロボロになりましたね。
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今回は会話?対話?による戦い。
益山 
でも面白い演劇ってだいたい格闘技みたいですよね。攻守が入れ替わりながら、お互い攻めの姿勢で。
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そう考えると不発というテーマは面白いなあ。見た後に色々考え込みそう。新藤さんはどんな不発弾を抱えているんですか?
新藤 
私ですか?私は益山さんと似ていて、やりたいことがいっぱいあった人間でした。服飾系の大学に行ってたんですが学生時代はバンドをやっていて、そのバンドは辞めちゃったけど明日は吉田寮のライブに出るし。バンドを辞めて2、3年はドラムを触るのも嫌だったんですけど最近はまたちょっと楽しくなってきたりして。というので、子供鉅人のメンバーとバンドやったりとか。あと演劇やってるとファッションも音楽もどうしても絡んでくるから、色々掘り起こされますね。爆発はしなかったけど・・・
益山 
不発してるね(笑)
新藤 
無限にあり過ぎて。
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他ならぬ、自分こそがその不発弾の存在を知っている。
新藤 
普段は忘れているようで、何かのきっかけで明確に思い出すからね。
益山 
極端に言えば、爆発させて成功させることだってできたわけですもんね。自爆は完全に死亡だけど、今スイッチを押したら意外と思いを遂げられた、みたいな。めっちゃ不謹慎な例えですけど、戦争で使われた爆弾の事故は、爆弾としては成功ですから。それは歪んだ成功だけど。
新藤 
爆弾を作った時に求めていたものとは違うカタチだけど。
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爆弾の武器としての重要な機能は、「爆発すること」よりも「爆発しないこと」だという論理転換があって。つまり、着弾や起爆まで絶対に爆発しないこと。
益山 
なるほど。
新藤 
タイミングを必ず守ると言う。
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花火とかね。
新藤 
あ、そうですよね。暴発したら終わりみたいな。
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そして不発弾が危険なのは、その機能が生きているかどうか誰にも保証出来ないからでしょうね。
新藤 
外からの刺激で起爆するかもしれない。昔好きだった人の香水を外で嗅いだだけでうわってなってしまう事もあるから。
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ああ、分かる。
益山 
あるね。外圧によって。
新藤 
掘り起こされてしまう。

質問 山中 麻里絵さんから 益山 貴司さんへ

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前回インタビューさせていただいた、山中麻里絵さんからの質問を頂いてきております。「夏にしておきたいことは何ですか?」
益山 
夏にしておきたい事・・・。なんか難しいですね。多分、そういうのって無意識に行ってるんですよ。花火とか海に行くとかってことじゃなくて。意外と深い質問だなぁ。
新藤 
考え込んでる!
益山 
いやあなたは?
新藤 
本当は海に行きたい。海の近くで育ってるんで。でも行くタイミングがない。釣りをしに行こうと思ってたんですけどバタバタしてて・・・
益山 
あ、分かった。全季節に言えることなんですけど、秋を待つことですね。
新藤 
オシャレな事いうわ。
益山 
最近は暑さも盛りを過ぎて、クーラーもなんだから窓の際に布団を敷いて寝てるんですよ。ちょっと前までは夜中でも蝉が鳴いていたのに、ある時を境に急に蝉の声が聞こえなくなったんです。代わりに虫の声が聞こえてきて「あ、秋になった!」と。子供の時は季節が変わったということに気づかなかったんです。でも歳取ってくると季節の変わり目が明確にわかるようになって。花火とかをしようと、夏を楽しむということもするんですけど、季節が切り替わるのを楽しむというのも大切なんですね。
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その時、体に何か変化が起こってるんですよね。
益山 
体と、心の中でも。一気に秋や春になった瞬間。
新藤 
私たちが暦で動いていないというのもあるからなおさらですよね。学期も年度末もないから。
益山 
ナチュラルに教えられてるところがあります。「暦の上では」とかじゃなく。肌寒くなったり、空気が澄んだな、と思うと冬。

音楽:oono yuuki

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oono yuukiさんの音楽がまた楽しみです。
益山 
出会いはうちのキキ花香が知り合いだったんです。「ハミンンンンンング」と「SF家族」に続き3作品目、すごく気も合うし彼自身の世界かも確立されていて。いわゆる劇伴音楽のように芝居に合わせるというよりも自分の音世界を提案するみたいな。一緒にやっていてすごく面白いです。
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今回の「不発する惑星」の不穏な感じとすごく合いそうな気がします。
益山 
上がってきた音を聞いて脚本や演出を変更することもあるので。そこは良い関係だなと思います。空気を作ってくれるのはありがたいですね。

屋上の撮影と三文オペラの話

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チラシの写真が興味深いですね。これは目を隠してるんですか?隠れちゃった、ではなくて?
益山 
隠してます。狙い通りです。本当はこれ別のプランを立ててたんですよ。宇宙の絵を書いた背景画の前で撮影するというプランだったんですけどしっくりいかなくて。で、たまたま屋上にこういう、物干し竿みたいなバーがあって。「その前で目線を隠してポーズ取ってみて」って言ったらすごく良くて。これ、一発目なんですよ。
新藤 
試し撮りですそれ。
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えっ、そうなんですか!
新藤 
この後バランスを調整して並び順を変えてみたり、ボスを入れて撮影してみても、微妙にバランスが悪かったりとか固くなったりとかして。試し撮りの一発目をそのまま使ってます。
益山 
でもこの写真すごく評判が良くて。何か不穏なパーティー感がある。
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そうですね。見事に目が隠れてるから。
益山 
全く加工してないです。
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奇跡ですね。
益山 
奇跡の一枚ですね。
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めっちゃ胡散臭い奴が何人かいますね。
新藤 
これはもう全員、素でやってるポーズですから。
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子供鉅人メンバーのポテンシャルは素晴らしいですね。アンサンブルの時も全力でやる子供鉅人。
益山 
うちは何か、存在感で勝負してるところがあって。うまい役者は他にたくさんいるんですけど私が芝居を観ていてやっぱり重視しているのはその人にしかできない表現だったり、その人の唯一無二な感じが溢れ出てるのが好きなんで。そういうタイプのメンバーが多いです。
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この人をずっと見てみたい、逆にもう見たくないという瞬間もある。三文オペラの億さんはまさにそんな感じでしたね。
益山 
三文オペラ楽しかったですね。
新藤 
やってるほうも楽しかったです。
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本当に泊まってたんですか、吉田寮に。
益山 
ずっといました。ひと月近く住んでました。
新藤 
その前も結構何回か往復してましたけどね。
益山 
あそこに住まなきゃ分かんないことがたくさんあって。ちょけて「いい空間じゃないですかー」でやっちゃダメな場所だと思うんです。そこにどっぷり浸かってやらないと負ける、表面だけこちょこちょやっても駄目だと思って。最初はちょっとセットを建てようと思ってたんですけど、途中でも演出方法を変えて、吉田寮にいっぱいあるソファとかを借りたら芝居が開けました。吉田寮そのままでいいじゃん、と。

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改めて「不発する惑星」どんな作品にしたいですか。
益山 
演劇格闘技みたいな。見てるほうも思わず手に汗握る、人格対人格。全然違うことやってたらすみません。
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人格と人格が対決する時に発生する嵐が見たいですね。
益山 
最近の本公演はちょっとしっとりした作品が多かったと思うんですけど、ちょっと今回はガツンと殴りに行く作品ですので、劇場に殴られに来て下さい。

凧とでんでん太鼓

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今日はですね、お話を伺いたお礼にプレゼントを持って参りました。
益山 
気になっておりました。
新藤 
あ、その大きいのそういうことだったんですか。何かお祝いの帰りだったのかと・・・
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どうぞ。
益山 
ありがとうございます(開ける)凧?あ、ホントに凧だ・・・
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今年も残すところあと4カ月。来年の干支の「子」ですね。今回のチラシは屋上で撮った写真でしたから、まあそこで揚げて頂ければ。
益山 
凄いな。
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あと、新藤さんにも持ってきてます。どうぞ。
新藤 
えっ(開ける)あ、ドラマーだからですか。
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でんでん太鼓です。
新藤 
明日、吉田寮のライブに出るのでピッタリです。
益山 
これ、飛ばせるのかな。凧揚げ凄い好きなんですよ。ウチのおじいちゃんがですね、凄く凧を作るのが得意で。正月に飛ばさせていただきます。

(インタビュー終了)