最近

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今日はどうぞ、よろしくお願いします。京都造形芸術大学の森谷聖さんにお話を伺います。森谷さんは最近、どんな感じでしょうか。
森谷 
よろしくお願いします!最近は卒業制作公演が終わって、卒業制作の展示の準備をしたりしています。
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去年12月の.com(ドットコム)「大感謝祭」とミンストレルズの公演「かわらせくんの研究」ですね。
森谷 
あとは個人研究の発表をやる人も中にはいます。私自身はそんなに関わってはいないんですけど。
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この時期になると、そんな感じなんですね。
森谷 
卒業制作の授業についても、一年間の計画を座組で立ててくださいという感じなんです。月2回、演技トレーナーの先生が様子を見に来てくれるという感じで。

ミンストレルズ「かわらせくんの研究」 1

撮影:京都造形芸術大学 舞台芸術学科
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森谷さんが出演された卒業制作公演の、ミンストレルズ「かわらせくんの研究」、大変面白かったです。作品前半、とてもコミカルだったからこのまま進むのかなと思っていたんですが、途中からだんだんとシリアスな展開になっていって。森谷さん含め、各世代のかわらせくんはダブルキャストで「実験マウス」という、研究のお手伝いをしてくれる謎の助手達を演じていましたね。
森谷 
いつの時代も一貫して、実験マウスだけはコミカルでいようという共通認識がありました。研究のために映画のミニオンズを見たり、USJに行ったり。
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しかし実験マウスたちだけは謎に包まれていましたね。人型なのか本当のネズミなのかどうかも分からない。最後の5代目になるまで、その存在については言及されないですもんね。
森谷 
作・演出の小林桃佳さんは、アニメとかの物語に影響を受けていて。可愛らしいキャラクターを使って、安心させながらもナイフでグサッと刺すような。そういう作風なので、自分たちも役者としてそこにプラスしていきたい、「これはきっと私たちがどんどん付け加えていいものなんだ」と思ったんです。役者間で、これはこうやらせてくださいというのが結構飛び交っている稽古場でした。自分の中では劇作家の書く物語の中身にもっと迫ろうというテーマがありました。
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実験マウスたちは、すべての時代で大体同じ性格っぽいですね。というか、代替わりはしないんですか?
森谷 
しないですね、半永久的な永遠の命なんです。
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サイボーグとかでもなく?
森谷 
ロボットと言うかドラえもんみたいな感じなんです。猫型ロボットならぬネズミ型ロボット達なんです。意思は持ってるんですがチップが埋め込まれている。
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そういう彼らがかわらせくんについているけれども、かわらせくんの孤独の足しにはならないんですよね。
森谷 
そうなんです。四代目かわらせくんはまるで道具のように扱われている時代で。実験マウスたちも心配はしてるんですが、彼女には響いていないんですよ。孤独で干渉が難しい。
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3代目ぐらいから神として扱われていましたからね。5代目かわらせくんからは実験マウスは去っていて、でも大切な局面に彼らが戻ってくるというね。
1ミンストレルズ「かわらせくんの研究」
◎作・演出◎
小林桃佳
◎出演◎
足立功至
嶋崎美都輝
髙島絵里
髙田瑠璃
高橋空
森谷聖
◎スタッフ◎
演出助手:髙田瑠璃
美術:明隅友香
照明:椛島睦未
音響:辻村実央
映像:小林ち乃
衣装:大窪真祐
制作:野田遥

公演時期:2019/1/19~20。会場:春秋座。

「クリエイション」

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森谷さんは静岡出身なんですよね。大学から京都からに来て4年間。どんな経験でしたか。
森谷 
今まで自分のことは何も知らなかったんですけど、京都に行きたいとか、演劇がしたいという直観のままに来たんです。行くだけ行くぞ、って飛び出してきて。でも静岡の人とは違う土地の、演劇をやる人たちと触れ合って、逆に自分のことを知ることができました。自分のことを知らないと演劇ってできないということを痛感しました。
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なるほど。
森谷 
四年間はとても楽しかったです。月並みですけど。自分とは全然違う人がいっぱいいて、仲間といいものができたと思うんです。その仲間も何を考えてるのかわからない、なぜこの人はこういうことをしてるのかわからないみたいなことがたくさんあって、すれ違いながら切磋琢磨していました。でも本当に楽しかったです。楽しかったと言うとあれなんですけどね。
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そんな中、ベスト3の思い出を挙げるとしたら?
森谷 
私は仲間と何かをするということについて重きを置いてたんですが、その仲間の一人がいなくなってしまったことがあって。大学を辞めたのかどうかも分からないんです。生きてるとは思いますけど、それが結構自分の中では大きくて。
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その人に向けて何か一言ありますか。
森谷 
元気に過ごしてくれていれば嬉しいです。まず生きていて欲しい。
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それはおそらく人間関係リセット癖ですね。
森谷 
そういう人は芸術の大学には多いみたいで。芸術関係に進む人って繊細な人が多いから。私は大雑把だから分からないんですけど、何か傷つけてしまったのかもしれない。
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アーティストの方は、自分の位置についてはこだわっているからその人にとってはもしかしたら森谷さんと縁を切ったつもりは全然なくて、いつか再開することもあるかもしれませんよ。
森谷 
そうだったら面白いですね。
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ベスト2は。
森谷 
ああ、迷ってしまう。ベスト2は、N2(エヌツー)さんとの出会いはとても大きなものでした。四年間の思い出ベストに入れていいのかな、杉本さんに怒られないかな。
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きっと大丈夫だと思いますよ。「雲路と氷床」は芸術センターで上演しましたね。
森谷 
芸術センターでクリエイションしたんですけど、クリエイションの意味を初めて理解した経験だったと思います。杉本さんは魅力的でミステリアスな、鋭くもあり柔らかな方でもあって。この人はすごいなという感覚がずっと残っています。相方の益田萌さんとは実は元々、バイト先が一緒で、演劇とは全く関係ないところで知り合っていたんです。顔見知りレベルでしたけど、半年間のクリエイションで関係性を構築して行ったんです。
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偶然ですね。
森谷 
杉本さんもそれを面白がって、バイトでの動きとかをやってみて、って。「雲路と氷床」は、稽古場で話し合うことで作品を作っていったんです。世の中に溢れているものを自分たちでよいしょ、って持ってきて詰めていきましょう、という。演劇の話もしますけど個人的な話もいっぱいして。
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印象的な作品でした。ベスト1は。
森谷 
やっぱりミンストレルズが一番大きかったです。「雲路と氷床」でクリエイションを知って、それから物語演劇から離れていたんですね。見る分には好きなんですけど、やる分にはちょっと抵抗が生まれ始めていて。そこから、物語演劇でもどこでもクリエイションというものはあるということを教えてくれたのがミンストレルズの稽古場でした。気付くのが遅かったんですけど、試してやってみて考えてみて、役とはちょっと違うけれども、やってみたらそれもまた役の演技になるかもしれないという体験をしました。演出と役者で、アイデアを出すと言う仕事については変わらないんだなということを思ったんです。
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演技は一体誰が作ってるのか問題。
森谷 
古典的なイメージとしては、演出家が役者に演技のリクエストをするというのがあると思うんですけど。俳優もそれと同じぐらい「あれがやりたい」「これがやりたい」というのを持っていないといけなくて。50%50%かなと思うんです。作品の責任は役者は追わないですけど、作品の顔にならないといけないということもあります。このアイデアはこの人が持ってきたからこの人のもの、というものでもないですし。それを採用した演出家だっているわけで、でも誰に最終的な責任や功績があるかというと難しいですよね。
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会話劇となると相手役とのやり取りや駆け引きがありますしね。抽象的なところだって会話劇ならできる。きっとそういうのも、造形大なら1回生の時に習うだろうと思うんですが。
森谷 
そこは、うーん、具体的に「こうすべき」とかいうのは習ってはいなくて。でも、「こうあった方がいいですよ」という感じで示されていて、「でも自分で全て決めていいばかりじゃない」とか、逆に、「言いなりになると飲まれてしまって、意思を持たないとつまらない役者になっちゃうよ」て言われていました。
撮影:京都造形芸術大学 舞台芸術学科

モノローグ

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京都造形大の授業で、一番影響を受けた授業は何ですか。
森谷 
私、よく他のクラスの聴講に行ってて。2回生の時に1回生の聴講に行っていたんです。平井愛子先生の授業で、チェーホフのモノローグをやってるんですよ。そこで一つ下の子の演技を見た時の衝撃が一番でした。その当時の私は、先輩だから「スン」って感じで涙は見せまいと頑張っていたんですが裏でボロボロ泣いてて。
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そんなにすごかったんですか。
森谷 
ちょっと悔しくなっちゃったんですよ。元々技術を持って大学に入ってきた生徒がその授業でよく言われることなんですけど、「上手くやろうとしなくていい」。それはスタニスラフスキー・システムなんですけど、1回生の頃はソーニャのモノローグでは分からなかったんです。
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なるほど。
森谷 
大学から演劇を始めた私には、感覚が囚われていないぶんビギナーズラックで何をしてもうまくいってたんですよ。のびのびとやれてたんです。演劇、楽しいなと。でもしばらくして自分が同じことしかできないんじゃないかって、壁に当たったんですね。会話劇だと相手役との共同作業で解消できたことも多々あったんですが、それでも限界に阻まれていて。4年間中、3年間は壁に当たっていましたね。最初の頃は何でもできる気がしていたんですが、それが何もできなくなる。セリフって何だろう、物語って何だろう、みたいな。1回生の頃はそれが何かわからなかったから楽しかった。やればやるほど限界が見えてきたんですよ。
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そんなタイミングで、平井愛子先生のクラスで1回生がやっていたのを見て衝撃だったんですね。
森谷 
のびのびやっていたんです。その姿が役の演技なんですよ。それがまた悔しくて(自分の気持ちと、登場人物の気持ちが噛み合っている。気持ちが噛み合っていればいい演技なのかと言うとそうとも言い切れないんですが)。ある一瞬の、役者自身の感情が、ソーニャみたいに見えたのは何でだろう。
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今回、森谷さんにこのタイミングでインタビューができてよかったですね。壁という言葉が出てきたのは良かったです。
森谷 
今も、壁と共にという感じなんです。先生からのアドバイスで指摘された点は全て潰すようにしているんですが、その上に自分が何ができるかというのを壁と共に考えて行っています。3年生ぐらいになってわかってきたんですが、その最初の授業だったな、と思います。

劇団たんぽぽへ

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森谷さんはこれから劇団たんぽぽに入るんですよね。
森谷 
こんなこと言うとすごく夢物語みたいになっちゃいますけど、小学校の頃に胸をときめかせてたんですよ。見てこんなに面白いんだったら、やったらどれくらい面白いんだろうって。演劇に導いてくれたのが劇団たんぽぽなんです。大学卒業して、社会人として働くということは何なんだろうって考えた時に、たんぽぽが演劇の楽しさを紹介して、嫌いならその理由を考えてもらったりとか、何か別のジャンルの演劇に繋がっていてくれたらいいなと思って。入り口としての役割が大きいのかなと思っていて、それが社会に貢献するということなのかなと。もちろん私も、自分のやりたいことはやりたいと思います。

質問 小林 欣也さんから 森谷 聖さんへ

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前回インタビューさせて頂いた、小林欣也さんから質問をいただいてきております。「次に旅行するとしたらどこがいいですか?」
森谷 
九州に行きたいです。海外に行きたいんですけまだ手が伸びなくて。あと、広島に行きたいです。祖父が広島出身で被爆者なんですよ。色々な話を聞いていたのでちょっとその場所に行ってみたいと言うか。旅行と言うか、でも美味しいものも食べつつ。

これから

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今後どんな感じで攻めて行かれますか。
森谷 
劇団たんぽぽで演技をしつつ、美味しいご飯を食べながらゆくゆくは結婚したいです。結婚相手を見つけて、子供を産んで。で、子供がちょっと大きくなり始めたらまた演劇を始めたいです。変な話ししてすいませんって感じなんですけど。子供に演劇を是非やらせたいとは思わないんですけど、見るだけでも見せてあげたいと言うか。今まで私がやってきたことを、それ以上に体験させてあげたらいいなと思っています。

プリミアスティーのキャラメルティー

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今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。宜しければどうぞ。
森谷 
あ、嬉しい。私、紅茶も好きですよ。
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キャラメルティーです。
森谷 
すごい嬉しいです。
(インタビュー終了)