味園ユニバースで踊る

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今日はどうぞよろしくお願いします。幻灯劇場の村上亮太朗さんにお話を伺います。最近、村上さんはどんな感じでしょうか。
村上 
最近は歯が痛くて治療に行ってます。ダンス関係で言うと、味園ユニバースで行われるショーケースに出す作品の振り付けをしています。僕も含めて19人で踊ります。
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それは観に行きたかった・・・。村上さんは俳優であり、ダンサーなんですよね。幻灯劇場の「盲年」 2の演技で非常に繊細な神経を感じました。役どころがまた繊細でした。主人公の「春くん」、彼は生まれつきの全盲であり、自己の在り方を探してさ迷っていたのですが、彼にこれ以上の生きる意味があるのかどうかが分からなくなっていってしまう、そんな道をなぞる作品でしたね。非常に好演でした。登場人物は他にもいますが、春君一人だけがいい人だったような気がします。
村上 
そうですね、確かに。
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むしろ、他の3人の役の心の在り方に恐ろしいものを感じました。昔自分が犯した罪に対して、完全に受け入れた上で無視している感じ。何もなかったと彼らは思っていて、こちらの方がある種のいたたまれなさを覚える、というような状態だったんですよ。
村上 
はい。
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春君の生まれは、まあ世間一般的にはかなり特殊で、本人には責任はないのにそういう呵責を世界は彼に浴びせているようだった。そういうプレッシャーの中で生きているギリギリの身体を、技術的にも高度に表現していたようで。大変見応えがありました。
村上 
ありがとうございます。あの作品を解釈しようとすればするほど難しくて。何人のお客さんにそれが伝わったのか・理解してくれたのか分からないし。春くんは良い人ですね。彼は地獄から生まれてきたから、一つ一つの言葉が普段言わないようなものなので。稽古していても頭がこんがらがった体験でした。
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そうですね、彼は地獄の中にいながらにして必死に生きようとしていましたね。私が彼の立場だったらもっと自分を憐れむかもしれない。けれど彼には自己憐憫はあまりなかったと思う。根本的には真っ当に生きようとしていたと思う。だからあの作品はラストシーンで序盤にループするし、輪廻の中で生きようとしている姿に、観ている者としては彼を肯定したいと思う。
1幻灯劇場
映像作家や俳優、ダンサー、写真家などジャンルを超えた作家が集まり、「祈り」と「遊び」をテーマに創作をする演劇集団。2017年文化庁文化交流事業として大韓民国演劇祭へ招致され『56db』を上演。韓国紙にて「息が止まる、沈黙のサーカス」と評され高い評価を得るなど、国内外で挑戦的な作品を発表し続けている。2018年、日本の演劇シーンで活躍する人材を育てることを目的に、京都に新設されたプログラム『Under30』に採択され、2021年までの3年間、京都府立文化芸術会館などと協働しながら作品を発表していく。(公式サイトより)
2第七回公演「盲年」
Under30支援制度プログラム採択 Kyoto演劇フェスティバル意欲的激励賞受賞作品
Story

舞台は大阪・八尾。ある誘拐事件に、
それぞれ関わりを持ってしまった四人の男女。
互いの距離が近づくにつれ「記録」と「記憶」がすれ違い、
不可解な事件のすべてが、盲目の少年に繋がっていく。
第四回せんだい短編戯曲賞を史上最年少受賞した藤井颯太郎の新作戯曲を、
Under30支援プログラムの第一弾として、京都府立文化芸術会館で上演。
世阿弥の息子・観世元雅の傑作能「弱法師」を下敷きに、現代の「盲目」を描ききる。

出演
村上亮太朗 / 春
松本真依 / 立花
橘カレン / 梅
藤井颯太郎 / 透

スタッフ
作・演出 / 藤井颯太郎 演出助手 / 今井聖菜 
機材 / 長井佑樹(ぷっちヨ@Kyoto.lighting) 音響 / 小野桃子
衣裳 / 杉山沙織 宣伝美術・写真 / 松本真依 
広報 / 橘カレン 石原口大樹
制作 / 谷風作 プロデューサー / 小野桃子

日程
2019年 1月 12日(土)~2月 3日 (日)
会場
人間座スタジオ・京都府立文化芸術会館

花言葉

村上 
「盲年」の第一稿目は全く違う導入のバージョンで。花言葉をひとつひとつ並べて語りながら、舞台上を回って三年が経過する。そこで倒れて、抱き起こすのが父親、という。
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それは、めちゃくちゃ面白いですね。
村上 
その花言葉の台詞は全部覚えたんですけど、斬新な入り方でしたね。
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彼は目が見えないから花言葉なんか覚えても全く意味がない。色の概念もないから、花言葉の真の意味合いを理解することはない。にも関わらず、彼にとっては重要な意味を持っている。
村上 
そこまで考えて、その上で差し替えたんだと思います。
撮影:白井康平
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そのバージョンも見たかったです。実際に上演された「盲年」、後半の春君のダンスシーンは素晴らしかったですね。役として踊ってたという感じでした。自分に降りかかったすべての物音を処理しきれなくなって踊り出してしまう。その流れに強い説得力があって。
村上 
そうなんですよ、僕は役者というよりダンサーなので、言葉を発することに抵抗があって。セリフの量はそんなに多くないんですけど、独白もあって。そういうのが溜まりに溜まってダンスという表現になっていたなと思います。また逆に、ダンスで表現しきれないところは言葉で表現して。だからあのダンスをジャンル化することはできない。振り付けを何かしようと考えていたのでもなく。
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それを解説しようとするのは多分野暮だと思うんですけど・・・彼の出自と障害と常識は、彼自身をここまで追い込み、逆に言えば生きながらえさせてきたわけでもある。彼の常識を外れるような事が浴びせられて、翻弄されて意思が持てなくなってしまう。混乱とかそういうレベルじゃなくて。そこに、アメリカの畜産オークション競売人のパフォーマンスの映像が重なっていて効果的でした。
村上 
あの時の心境としては、表現というのとは少し違って。まず、後ろで流していた競売人のは僕たちから見たらラップのような音楽のように聞こえるが、畜牛からしたら残酷なものでもある。バックグラウンドを照らし合わせると頭の中で考えないといけないことも沢山あるんですよね。音が流れてるから踊るではなくて、その瞬間瞬間で身体が反応して、思いついて、さらに思いついて動いて、という連鎖が続いていったという感じです。
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言葉に打たれて体が反応して連鎖して・・・例えば、その中に快感はありましたか?
村上 
蜷川幸雄の演出した「近代能楽集弱法師」に近い感覚があって。戦時中の記憶がよみがえり、性的な欲求にまで高まる。内から外に出るというより、外から中に入ってきて、入りきらない。パンパンになっていくイメージ。そこからもう逃げられない。だからあのシーンだけ、ほとんど記憶がないぐらいの。だから何度か舞台から落ちていました。
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まあ、目が見えていないですからね。

作業論

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前回のインタビューで橘カレンさんが、演劇は作業じゃないかみたいなことをおっしゃっていて。確かに、そんな面もあるかもしれないなと。作業そのものをパッケージにまとめるのが演劇の稽古の一つのあり方なんだろうなっていうのはあります。村上さんの「盲年」はまさに、目が見えないからこそ組み立てられる様々な流れから演技が構成できるということがあったのかもしれない。で、尚且つ、目が見えていないからこそ生まれる混乱や迷いも、面白さに直結するのかもなあと思っています。役者は本当に自分の状態や演劇の構成を正確に捉えておくべきなのか。
村上 
それはすごく僕も実感しています。作業的なんですけど、やっぱりちゃんと話すことが大事だと思っていて。そういうところが何らかのこだわりに繋がっていく。積み重ねるというよりかは、その人が何を考えて何を持っているのかを分かち合うことができる。演出の人の指示は聞くけど、それが全てではないと思っていて、その人を越えて行かないといけないから。作業構成プラス、周りをサプライズさせたい。こんなこともやってしまうんだと思わせる稽古ができれば楽しいなと思います。みんなで笑顔で楽しく稽古やってましたというよりは、ちゃんとコミュニケーションが取れた稽古場だったと思いました。全員ですごく考えてましたね。
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周りの人と理解しあう。
村上 
僕はダンサーでも役者としてでもなく僕として考えている事や思っていることを素直に表現できればと思います。
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どこかの段階になると、作業の考え方でだけはいかないんだろうなと思う。役者が自分の状態を把握しようとしても出来る訳がない、という話を前回のインタビューでして、そうかもしれない!と思って。だから春君のダンスシーンも、作業と言う言葉だけではくくれないものだった。
村上 
僕はもう、理解しようと思ってやってるわけではありませんでした。台詞のやり取りについても、稽古でやった事が出来ているかよりも、会話がその場でできているかということに重きを置いて行っていました。稽古が本番であり、本番も稽古でした。

残る

村上 
終わってからも、何かが残っている感じがします。盲年は、脱皮したという感じがありましたね。自分の中でも印象に残る公演だったと思います。
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もう一度やってほしいですね。
村上 
何年後かに。次のダンスシーンは全然違うものになってるかもしれない。全く動かないかも。

質問 大山劇団さんから 村上 亮太朗さんへ

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前回インタビューさせていただいた大山劇団の四人から質問をいただいてきております。まずは大山さんから。「音と動き、どちらから先に作りますか?」
村上 
ストリートダンスと呼ばれるものは音楽から生まれたジャンルなので。作品を作るときは音楽をちゃんと聞いてそこからです。でも僕が自分の作品を作る時は動きからです。文字を書くこともあります。イメージトレーニングをするのが好きなので。
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女優の加納和可子さんからです。「落ち込んだ時はどうしますか?」
村上 
さらに落ち込みます。立ち直ろうとしないです。バーッと言われたときに、自分でさらに落ち込むように別の面から自分を責めて落ち込んで寝ます。
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眠れるんでしょうか。
村上 
眠れないんですけど、言われた後は自分がひとつ引き上がるので。一つ指摘されたら十倍は考えます。一生ダメ出しされるという覚悟はあるので。落ち込むこと自体については気にしない。
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次はプロデューサーの清さんから。「ぜひ、三栄町LIVEに絡んでください」。
村上 
ぜひ。よろしくお願いします。
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次は、片瀬直さんからです。「東京についてどう思いますか?」
村上 
まだ見ていないのでよく分からないです。語れるレベルではないので。

10年

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村上さんがダンスを始めたのは何時からでしょうか。
村上 
3歳からです。姉が始めたのが先でした。10年ぐらい面白くないなと思いながら続けていました。
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面白くなかったんですか!
村上 
僕の周りでダンスをやってる男の子が僕しかいなかったので。他にもテニスとかバスケとか色々スポーツはやってたんですけど、もうすぐ部活も終わるし、高校生なったら部活やらないだろなって思っていて。で今、ダンスをやっている自分は、本気でダンスをやったことがあるのか、一度本気でやってみようと。そこから変わりました。自分の中でちゃんとやってみよう、真剣に向き合ってやってみたら、ひとつの動きに関してももっとうまく踊れるということに気付いて。それが中学校1年か2年生でした。
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誰かに影響を受けるとかではなく自分からそう思ったんですか。
村上 
その時に自分は何も頑張っていないなあと思って。このままでは何もできなくなる、それが自分にとってはダンスだったんです。けれど、ダンスのことは何も知らない。ならまずは調べようと思って、ネットでダンスの関連動画をとにかく見ていました。その時に父親からロックダンスとポップダンスのチームが踊る10分ぐらいの動画を教えてもらって。それが衝撃でした。ダンスにはジャンルが分かれてるけれども全て繋がってるんだということに気づいて。クラシックバレエもヒップホップでも、どの踊りをしても繋がってるんだと。そこに気づいてから、一つのジャンルを極めても、自分のオリジナルのジャンルを作っても、どれも繋がってるんだという安心感がそこに生まれたんです。正解じゃなくても間違いはない。組み合わせるのもいいなぁと思うようになりました。
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幻灯劇場のメンバー紹介ページの、村上さんのページに載ってるアイアンダンスコンテストの動画を拝見しましたがとても良かったです。
村上 
あの作品は自分のやりたいことが出来ました。ただ二人の男女がいて踊る。恋愛に持っていくとかではなく。最初の入りだけで4時間ぐらい試行錯誤しました。

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最近は何を考えていますか?
村上 
今は、どうやったら自分が生きていると言えるかな、という事に答えが出て。それは物作りですね。ダンスや演劇じゃなくても、小物や料理を作ったり。作るのが好きなんですね。最近は衣装作りを始めました。
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衣装ですか!
村上 
「盲年」の衣装がすごく可愛くて。僕も裁縫は得意なので家のミシンを使ってノータックテパードを作りました。こういう感じです。
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おお、これ凄いですね。
村上 
布地を買って作りました。服を買いに行っても欲しいものが大体高くて。。なら作ってしまおうと。デザインやサイズも自分専用に出来るので、絶対的な安心感があります。服作りをして良いなと思った事、一番は愛着ですね。服ってやっぱり消耗品なので、もし破れたりとしても自分で縫って直せるんですよね。愛着があるから絶対に捨てれないですし、綺麗にたたむようになりました。

これから

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これからはどんなことをやっていきたいですか。
村上 
これまで面白い作品に出会うことができているので、自分はすごく運がいいなと思うんです。色々な所に行って学んで自分から、作ってる人の頭の中を覗き込むようなことができれば嬉しいなと思います。本当に心から楽しいなと思います。ダンスじゃなくても服や物作りで楽しいということが分かったので。60歳ぐらいになったらカッコいいおじいちゃんになりたいです。
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何かを作るのが楽しいというのはいいですよね。
村上 
岡本太郎とか好きでかっこいいなぁと思います。周りからの評価を気にせずに突っ走ってきたらいいなと思います。頂いた感想の中で、「好き」や「嫌い」の方が嬉しいです。「上手」とか「下手」とかではなく。

ニホンオオカミのぬいぐるみ

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今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
村上 
ありがとうございます。可愛い。
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ニホンオオカミのぬいぐるみですね。
村上 
ぬいぐるみのプレゼントは初めて貰いました。
(インタビュー終了)