当時の公演情報
「tomaru.」表紙

tomaru.秋号
(とまる。企画)

京都小劇場の総合誌・フリーペーパー「tomaru.」

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今日はフリーペーパー「tomaru.」の発行人、高田さんにお話を伺います。宜しくお願いします。実は今日持ってきているんですけども。
高田 
ありがとうございます。恥ずかしいですね。
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今日はtomaru.について色々伺えればと思います。まず、これはどのような経緯で発行されたのでしょうか。
高田 
最初は、京都の演劇情報ってあんまり手に入れられないなあと思ったんですね。手段と言ったら演劇公演の挟み込みや青少年活動センターなどの施設の置きチラシで。しかも、各劇団がビラの形で出しているじゃないですか。網羅しにくいんですよ。
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そうですね。全部の情報を総合する事は難しいですね。
高田 
そういうのがありまして。とはいえ「演劇ぶっく」とか「ぴあ」は取り扱う情報圏が広すぎて、大阪みたいな別の土地に見に行かない人には向かないと。だから、もっと狭い範囲での演劇情報がしっかりと網羅された、京都版の演劇情報誌があったらお客さんも便利だと思ったんですね。そこから、演劇を見た事がない人と舞台をつなぐ役割も必要なんじゃないかなという考えが始まったんです。
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今日はそういう、演劇界におけるtomaru.の役割についても伺いたいと思います。宜しくお願いします。
tomaru.
京都の小劇場の情報を専門的に扱うフリーペーパー。季刊(4月・7月・10月・1月)。インタビュー実施前の号ではニットキャップシアター代表ごまのはえの特集を組んでいた。他、劇場紹介記事、各公演のスケジュール表なども。

「これじゃダメなんだな」、横の繋がりを作れたらいいな

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しかし、今回の表紙はインパクトがありますよね。いきなりごまのはえさんの暗いトーンの写真が出ていて、誰でも「え?」と思うインパクトがあると思います。普通表紙は女の子が出ているもんなのに。それをめくると、ごまのはえさんの濃い記事が数ページ続くという・・・。でも、めくっていくと情報誌としての機能も共存していて、普通の読み物としても面白く読めました。
高田 
ありがとうございます。でも、たくさん失敗をしてるなあと、もっと改善していきたいなと思います。今回やってみて思ったのは、「これじゃダメなんだな」と。
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「これじゃダメ」。どういう。
高田 
これをキッカケにして演劇を見た事の無い人が劇場に来るかというと、まだ無理だなと。その為にはどうしたらいいかなと思ってるんですけどね。
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ええ。
高田 
話は飛ぶんですが、今って各劇団ごとにお客さんがいるという状態だと思う訳ですよ。たとえばニットキャップシアターにはニットにしかいかないお客さん、地点なら地点にしか行かないお客さんがいると。いわゆる「演劇のお客さん」ていないんですね。でも、ニットのお客さんが地点の舞台に行ったり、地点のお客さんがマレビトの会の舞台を見に行ったり。そういう横の繋がりを作れたらいいなと。
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横のつながりですか。そういう視点は面白いですね。
ニットキャップシアター
1999年、劇作家・演出家・俳優のごまのはえを中心に旗揚げ。個性的な俳優陣と高い集団力をもってごまのはえの独特な世界観を表現する。
地点
代表・演出、三浦基による特異な表現による硬質な劇空間が特徴。洗練された俳優陣、高度な舞台美術、分断されて文節どころか音節ごとに再構成されたテキストなど、特徴多し。
マレビトの会
2003年旗揚げ。作・演出は代表の松田正隆氏。暗号のようなセリフが観客を非日常の巨大な世界に連れ去る。

「立ち止まる事って大切だ」

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「tomaru.」のコンセプトについて伺います。高田さんがこれを発行したのは、どのような背景があったのでしょうか。
高田 
ある思想を持っているんですよ。「立ち止まる事って大切だ」、という。それで「tomaru.」なんですけど。演劇って、立ち止まる方法なんだなという思いがあるんですよ。
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立ち止まる方法ですか。
高田 
演劇って、少しも生産性がないと思うんですよ(笑う)。
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またハッキリと言い切りますね(笑う)。
高田 
全く社会を前に進める事がないし。舞台見てていつも思うんですけど、これでどうなるんだろうと。何も変わらないじゃないかと。これで社会がどうこうなることはない。でも、演劇を見たりやったりする事で非日常に入るというか、前に進む事から一旦離脱して、世界の見方を変えることが出来るんです。劇場はちょっと疲れた人の避難所として機能出来るんじゃないかなと。
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なるほど。
高田 
例えば、僕は以前、砂連尾理さんのワークショップを受けた事があるんですね。その時に、温かいお風呂に入った時みたいないい気持ちになったんですよ。そこで、僕ははっきりと世界に対する見方がちょっと変わったんです。確かにこうやってちょっと世界の見方を変える事は社会の役には立たないかも知れないけど、僕にとっては重要な事だったんです。だから、例えばそういう方法を知っていそうな方に対して取材をしていきたいですね。
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今回はごまのはえさんの特集で、人となりから世界観までが詳細に紹介されておりましたが。
高田 
ごまさんも実際、「野垂れ死にたい」みたいなことをおっしゃっていて。この人もある種、社会という意味に組み込まれる事を拒否しているなと。
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次回は砂連尾さん特集ですね。今号の予告にありました。
高田 
はい。僕は本当に尊敬していて。
5砂連尾理
砂連尾理+寺田みさこ
京都を中心に活躍するコンテンポラリーダンスデュオ。1991年より共同で活動を開始。公演活動だけでなく、ワークショップ・教育などアウトリーチ活動も活発に行う。

疲れた人のための休憩所

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さっき、劇場が疲れた人のための休憩所として機能しうると仰いましたが。その疲れとは、どのような種類ものなのでしょうか?
高田 
一言で言えば、意味に疲れるという。僕らは物事に意味を求めるじゃないですか。このために生きてるんだ、みたいな。今の社会自体、効率性や生産性を追い求めて、意味のあることしかしちゃいけないようになってきてるように思うんですよ。僕はそれに違和感を持っているんです。何でそんなにテンションを上げていかなくちゃいけないんだと。
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分かります。時々、疲れますよね。
高田 
多分世の中には、前向きに生きて行ける人とそうでない人がいるんですよ。意味を求める社会から抜け出す為に、劇場は無意味な場所じゃないといけないんじゃないかと思うんですね。例えば今では批判されることも多い80年代の演劇では、遊戯性が大切にされていた。「演劇とは遊ぶ事だ」って。それも一面の真実だなと思うんです。
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ああ、そういう役割も劇場は担っていると。
高田 
多分、それを必要とする人は一定数いるだろうと考えています。だからこの「tomaru.」で、別の価値や生き方を主張出来ないかなと。
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なるほど。そういうコンセプトで発刊されていたんですね。

劇場に必要な3つの要素

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では、今の京都の劇場そのものについてはどのように思われますか?
高田 
そうですね。劇場には3つの要素が必要だと思います。まず一つは、教育制度ですね。皆それぞれやりたい事をやっているのはいいですけど、それだけじゃ演劇界みたいなものは作れないだろうと。次の世代に伝えなくちゃ文化は作れない。
__ 
後進への教育ですか。
高田 
それから、情報宣伝力の無さですね。学生劇団のメンバーでさえ、アトリエ劇研とか京都芸術センターとかを知らなかったり。そしたら一般市民も知らないんじゃないかと。また、例えば劇団に貸す小屋としての役割はもちろん、宣伝や制作の仕事も引き受けたりすれば劇団は芸術的な事だけに集中出来るんですね。そういう風に劇場が機能すべきだろうと。
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アトリエ劇研みたいな。
高田 
最後に、批評の機能もあるべきじゃないかと思うんです。芸術って、ぱっと見わかんない訳ですよ。でも批評を通して見る事で「ああ、そういうことだったのか」と理解出来るんですね。簡単な言葉では掬いきれないものを表現している劇とかはすぐには受け入れられないじゃないですか。
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観客のためにも批評が存在するんですね。
高田 
どの劇団が面白いのかを客観的に評価する仕組みが必要だと思います。
アトリエ劇研
京都市左京区下鴨に位置する客席数80程度の劇場。毎週のように演劇・ダンスが上演されている。運営主体はNPO法人「劇研」。
京都芸術センター
京都市の中心部にある芸術振興の拠点施設。元明倫小学校であった建物を再利用するかたちで設立された。ここの上演スペースでも毎週のように公演が行われている。

途方もない話

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劇場に今後必要とされるのは、「教育」「情報」「批評」の3つという事ですね。
高田 
「教育」の機能として、僕が劇場に提案したいのは、学生劇団に目をむけることですね。例えば、京都は大学生の町なんだし。学生劇団の演劇コンテストをやればいいんですよ。
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学生劇団が鍵になると。
高田 
せっかく演劇に興味のある若い人が一同に集まっているんだから、彼らを対象にしたワークショップを1か月〜1年の長期に亘って開催したり。そこから才能のある子を劇団にスカウトすることも出来ます。そういう教育活動をしないと歴史は出来ないし、文化も根付かないし、10年後も進歩しないままだと思います。途方もない話ですけど。

映画のお客さんを引っ張る

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「情報」については。
高田 
一言で言うと、もっと情報を開くべきなんじゃないかと思います。例えば演劇計画ですが、普通の人は誰も知らないなあと。
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そうですね。とはいえ、求めなければ得られないのが情報だと思いますが。
高田 
でも、求めている人の内でぐるぐる回していても尻つぼみじゃないですか。だけど、例えば演劇をやっている人がどういう事を考えて作っているかを明らかにすれば、人物という接点から通路が出来るんです。
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今回のごまさんの特集もそうですね。
高田 
あるいは、映画と芝居との共通点を掘り出してアピールすれば、映画のお客さんを引っ張ってこれるかもしれない。
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情報開示することで、映画館から劇場にお客さんが来ると。
高田 
演劇は、例えばエンターテイメントの枠内の一つの選択肢として映画と競合出来るんですよ。でも、エンタメ好きの人と演劇をつなぐ通路があまりない。演劇に興味のない人にただ芝居をの話だけをしても興味を持ってもらえない。例えば、芝居のビラを見ても何やってるか全然分かんないし、映画よりちょっと高い2000円3000円のお金を取られてしかも面白いという保証は全くない。
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そうですね。
高田 
それは一体誰が進んで見に行くんだと。だからこそ、もっと情報を透明化して、お客さんが選択できる環境を整えなきゃいけない。やっぱり、演劇でしか出来ない事はあるんですよ。非日常性の提供とか、ある考え方の提示とか。
演劇計画演劇計画
京都芸術センターで舞台芸術作品を生み出す長期的視野に立ったプロジェクト。特定のアーティストによる作品上演企画や、作品を公募・上演・審査するコンクール企画など。

今後・1カ年計画

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今後の「tomaru.」どのような感じで。
高田 
1カ年計画がありますので、お話しようと思うんですけど。
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お願いします。
高田 
春は情報誌寄りにしたいですね。こないだゴ・バーン見てて思ったんですけど、「春はこういうスイーツ食べにいきたいな」とか、見てるだけで楽しいんですね。そんな感じで演劇を選べないかなと。
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可愛い感じのね。
高田 
「この演劇召し上がれ」みたいな。ショートケーキっぽい、あるいはチョコケーキっぽい演劇があったり。まあそんな芝居ないんですけど(笑う)。そういう感じで取り上げてみたいですね。
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それが春ですね。
高田 
で、夏に「裏・演劇計画特集」をしたいなと。芸術センターの演劇計画を批評する目があればいいなと。秋には「劇団就職特集」。
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リクルートに手を出すと。
高田 
就職できないんですけど(笑う)。劇団という道に突き進むと人生どうなるのか、みたいな感じで演劇という業種を就活の選択肢に加えるという意味でもやってみたいですね。
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それは面白いそうですね。
高田 
冬には、誰か一人だけを特集する形を考えてます。というのが今年の計画です。
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素晴らしい。今後どうするかというのが完全に決まってますね。どれも面白い企画ですし。
高田 
どうなんでしょうね。僕適当ですから(笑う)。でも、若いですからね。若いし、何も持ってないし。いっぱい失敗出来たらいいなと思いますね。「tomaru.」やってて一回も成功したって思った事ないんですよ。
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全部失敗したと。
高田 
でも、そういう失敗から学べることは多いんです。失敗はするものですけど、それを恐れて何も新しい事をやらなかったらそれこそ先細りじゃないですか。というか、どんどん失敗していきたいですね(笑う)。犯した失敗も提示していけたらいいなと思いますね。

ブックカバー

高田さんへ

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今日はですね、高田さんにお話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
高田 
ありがとうございます。これ用意するの大変ですよね。
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いえいえ。
高田 
(開ける)あ、ありがとうございます。僕の全てを見抜いているかのような。
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ブックカバーですね。
高田 
いやー。今日もですね、本を3冊くらい持ち歩いているんですけど。是非使わせてもらいます。
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どうぞ、合わせてみてください。
高田 
ピッタリです。ありがとうございます。

  
(インタビュー終了)